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特別対談|安心して最期まで過ごせる「住まい」を考える 「医療」が支える有料老人ホーム

コラム

高齢化が一層進む中、「終の棲家」に求められる環境とは。歳を重ね、病気を抱えていても安心して最期まで過ごせる「住まい」のあり方について、京都大原記念病院グループの医療が支える有料老人ホーム ライフピア八瀬大原Ⅰ番館施設長・上田聖と、京都府立医科大教授・水野敏樹氏が語り合いました。 

必要な「医療」を受けられる安心感

水野彩(以下、司会)
本日は高齢期の住まいのあり方をテーマに水野敏樹先生、上田聖先生にお考えを伺いたいと思います。まずは、ライフピア八瀬大原Ⅰ番館(以下、八瀬Ⅰ番館)のご紹介をお願いします。

上田聖(以下、上田)
八瀬Ⅰ番館は、平成18年に開設しました。「住まい」という環境のなかで必要な医療・看護・介護が24時間365日連携して、移り住むことなく安心して終身過ごせる「住宅」というコンセプトです。様々な疾患を抱えた高齢者がその人らしい生活を送れるよう、最期まで支援することが使命であると考えています。
八瀬は毎年、春は桜、秋には紅葉が多くの人を魅了し、四季の移ろいを暮らしのなかで感じられる景勝地です。叡山電鉄 八瀬比叡山口駅に直結しており、市街地まで20分で出られるアクセスの良さも魅力です。

司会
近年、高齢者住宅が増加していますが、どのようなことが重要なのでしょうか。

水野敏樹(以下、水野)
歳を重ねると、四季や京都に感じる魅力など、物事の感じ方は変化します。そんな変化を心穏やかに、楽しみながら過ごせる環境であってほしいですね。その点、八瀬Ⅰ番館は四季の景観が美しい八瀬にあって、かつ駅前とアクセスも良い。非常に恵まれた環境だと感じます。同時に終の棲家とも表現されるように、「最期をどう迎えるか」という視点は切り離せないと思います。

司会
具体的に言いますと。

水野
医療部分の対応です。有料老人ホームから急性期病院に入院された方が、慢性的な医療ニーズが出てきたために、入院前の施設に戻れなくなることが時折あります。

上田
八瀬Ⅰ番館にも、そうした理由で他の有料老人ホームから転居してくる方がいます。終の棲家とする場合、医療部分の対応がしっかりできる施設が望ましいと思います。

水野
医師の立場からですと、普段の関わり方で判断基準が変わります。例えば、脳出血や大動脈乖離など致死的な病気になった場合、医療がどこまで介入するべきか。常にご入居者とご家族の気持ちを汲み取り、医療者も含めて意見を一致させておくことが重要ですね。

上田
京都大原記念病院グループ 大原在宅診療所の医師が定期的に居室を訪問しています。24時間365日体制で、定期診察以外にも気になることがあれば足を運び看護師などとこまめにやり取りをしています。特に私が信頼を置いているのは、普段からご家族と連絡を取り、信頼関係づくりに力を注いでいる点です。加えて入院が必要な場合は、車で7分の京都大原記念病院がバックアップし、必要に応じて外部の急性期病院とも連携しています。いつでも必要な医療を受けられる「安心感」が一番の強みです。

水野
素晴らしいですね。私の父も最期は有料老人ホームでお世話になりました。急変して救急車で運ばれたとき、父が「楽にしてほしい」と言うのを聞いて、次に急変したら静かに看取りたいと思い、考えを医師に伝えました。事前のやり取りで、穏やかな最期を迎えられたと思います。

上田
八瀬Ⅰ番館は医師のほかに、看護・介護職員を法定の1.5倍以上配置(夜間は看護師が常駐)しています。また、全居室にセントラルパイピング(酸素・吸引)を完備していることもあって、ご入居者の多くが看取りまで希望されます。ご家族と「ありがとう」で最期を迎えられているのも、ソフト・ハード両面で取り組むからこそだと思います。

水野
有料老人ホームでセントラルパイピングまで完備しているのは聞いたことがありません。グループの哲学が表れる配慮ですね。

 

気持ちに寄り添う「心」

 水野
歳とともに、体の動きや記憶など「できなくなった」と感じることも増えますが、決して悪いことではありません。しかし、例えば物忘れ症状が出ている軽度認知障害と診断された方が「いら立つ人」と「落ち込む人」に分かれるように、自分の置かれた状況と、こうありたいという想いに折り合いがつかない人も多い。

上田
一人の高齢者として話をするならば(笑)、確かに気分が沈みやすくなります。痛みを訴える方に必要なのは、痛みと同時に起こる精神面の変化も含めたサポートだと思います。

水野
痛みがあると、なおさらですね。まずは何に対して、どのような気持ちであるかを理解する。そのうえで「できること」に目を向けるような関わり方が求められると思います。

上田
それには不安な気持ちに寄り添う「心」のこもったケアが大切だと思います。ここ数年、ご入居者の親族や友人の紹介で入居される方が多いです。これは職員の心を尽くしたケアの成果です。実は私の妻も入居していますが、最初は「家に帰る」と言って聞きませんでした。ところが、職員が根気強く関わってくれたお陰で、今は全く言わなくなりました。そんな様子に、「将来は自分も入れてね」とお願いしているくらいです(笑)

司会
それは最高の褒め言葉ですね(笑)。

水野
私が普段接することの多いパーキンソン病の患者様は、症状が進行すると立ち上がる時にふらつきやすくなるなど日常生活にリスクが生じます。すると歩行器、車いす、最後はベッド生活と制限が加わります。ベッド生活(寝たきり)になるとADL(日常生活動作)や認知機能の低下は避けられなくなります。できるだけ座る時間を長くしたり、リクライニングを起こしたりするなど工夫していきたいところです。

上田
特にパーキンソン病の方は服薬管理なども大きなポイントになると、八瀬Ⅰ番館での様子からも感じます。持病のある方にも安心していただけるように令和4年度から看護師をさらに増員して、個別の対応をより手厚くしています。

司会
奥様の入居当時のご様子は珍しくないと思います。ご本人の生活環境が変わるという不安に加えて、入居準備に追われるご家族の負担を想像すると、どんなに良いところでも入居をためらってしまうかもしれませんね。

上田
その点、八瀬Ⅰ番館は入居一時金がなく、居室には家具家電を備え付けています。どちらも入居前の準備負担を極力減らすための取り組みです。新しい生活に馴染めるか不安な方や退院までの期限が迫っている方も、気軽にご相談ください。

司会
それは、ご家族としても安心ですね。

上田
いずれにせよ「食事が美味しい」「施設がきれい」のような目に見えることだけでなく、ご家族も含めた日々の関わりや信頼関係づくりという意味での「心」が一番大切だと思います。

 

時代に適した技術導入 NTT西日本などと連携

水野
私が関わる京都府立医科大学脳・血管系老化研究センター(1990年開設)は、第一次ベビーブーム(1947年-1949年生まれ)の団塊の世代が後期高齢者を迎えるピークとなる2025年に向けて社会はどう対応すべきか(2025年問題)を検討していく立場にありました。

上田
しかし、高齢化は一層進んでその先の2040年にも焦点が移りつつありますね。

水野
その通りです。次の焦点は、第二次ベビーブーム(1971年~1974年生まれ)の団塊ジュニア世代が関わる2040年です(2040年問題)。今後、高齢者が増加し、生産年齢人口が減少する人口動態を考えると「ロボット技術」や「IT技術」の活用を考える必要があるように思います。

司会
どのような期待ができるでしょうか。

水野
例えば認知症の方は短期記憶障害の影響から、直前まで会話していても、そのこと自体が記憶から抜け落ちてしまいます。結果として同じ会話が繰り返される場合、数回であれば人が丁寧に対応することも可能でしょうが、数十回続くと難しくなります。そのせいでご入居者が不安になり、生活に制限などが生じるくらいなら、利点を冷静に見極めてIT技術などを活用すればいいと思います。

上田
現在、京都大原記念病院グループでは、NTT西日本と共同で睡眠センサーとAIを用いた見守りシステムの構築に向けた調査を進めており、今後はコミュニケーションロボットを用いた共同調査も検討しています。
八瀬Ⅰ番館の魅力は、いつでも必要な医療を受けられる「安心感」です。一人ひとりの想いに応えるケアを目指して、有用な技術は積極的に活用していきます。

水野
今後も期待しています。

司会
本日は、ありがとうございました。